2月6日午後、愛知県稲沢市の国府宮神社で開かれた『国府宮はだか祭』。祭りの中心は何といっても「神男」。さわると厄を落とすことができるとされ、この神男を目指して下帯姿の裸男達が勇壮に揉みあいました。


 愛知県の尾張地方に住む人の多くが「1度は触りたい」と願い、選ばれし者だけが務めることができる神男。

その神男を決める選定式は、1月26日に国府宮神社で行われました。

 志願者は4人、運命の1番くじを引き、令和としては初となる神男に選ばれたのは、稲沢市祖父江町の会社員・下園将平さん。平成3年生まれの28歳、2回目の志願でした。

決定後には、目頭が熱くなった下園さん。

下園将平さん:
「感無量です。この国府宮が僕とても好きなので、命を捧げ大役を全うする気持ち一つです」

 神男の下園さん、その足で向かったのは、理髪店。神男は眉毛以外のすべての毛を剃り生まれたままの姿で裸男の群れに飛び込むのです。

 その頃、下園さんの自宅には多くの人がお祝いに駆けつけていました。そして下園さんは歴代の神男の経験者で作る「鉄鉾会」に連れられ自宅へ。家族に報告しました。

鉄鉾会 大野会長:
「下園さんが無事に大役を終えるように、最後まで家族と一丸となってお祭りが無事にすみますように。乾杯!」

下園さんの父親:
「長年やりたかった神男に選ばれることになって、本人は大変喜んでいると思いますけど。これで皆さんの期待にそえるように、頑張ってもらわんと」

 6歳から空手を習っていた下園さん。最初に祭に参加したのは18歳の時。家族全員が、この祭を大切に思ってきました。いつかは自分が神男に…。

結婚して子供が生まれてからも毎日身体を鍛え、その日に備えました。

下園さんの妻 朱里さん:
「神男になるのが昔からの夢だったので、協力したい」

 6日は神男として参道に出て楼門を通過。

およそ170メートル先の「儺追殿」に上がることを目指します。

 道中では8000人の裸男が押し寄せる圧迫で呼吸困難や脱水症状に…。鉄鉾会の人たちに周りをガードされ、かがみながら進みますが、過去にはあばらを骨折したり大けがをしたりした神男もいて、まさに命がけの大役です。

下園さんの母親:
「鉄鉾会の人を信じて、無事(儺追殿に)上がるようにと思いますけど」

神男・下園将平さん:
「必ず、必ず(儺追殿に)上がってきます」

下園さんの父親:
「しっかり帰って来いよ!無傷で帰って来い!」

下園将平さん:
「絶対上がってくる!」

 神男に選ばれると家族とは一旦、縁を切り神事に入ります。

 神社にこもって三日三晩、白米と、たくあん、白湯以外は口にせず、身体を清めます。

その間に、去年とおととしの神男の経験者らから、心構えや命を守る方法を学び、その日を迎えたのでした…。

 祭り当日、6日午後4時22分。祭の会場で裸男が激しくもみ合う中へ、神男・下園さんが飛び込むと、一斉に雄たけびが上がります。

 この時を待っていた裸男たちは、神男にさわり厄を落とそうと一斉に下園さんのもとへ殺到。渦を巻くように入り乱れ、裸男が放つ熱気は、たちまち湯気となって立ち上ります。

 裸男の壁を縫うように儺追殿を目指す神男・下園さん…。

 もみ合いが始まっておよそ1時間、祭りはクライマックスに。

裸男達から触られ、彼らの厄を一身に背負った神男が儺追殿に担ぎ上げられると、大きな拍手が巻き起こりました。

 18歳で初めて祭に参加して、この日を長年夢見てきた下園さん。見事、神男としての大役を果たしました。